第7章 23話 淡くかがやく誘宵の月の夜に②

「ユナーッ」


 ふいに、遠くから名が呼ばれた。振り返るとエスミナが手を振って駆けてきた。


「会えてよかった。サーヴィア祭りは楽しめてる?」


「うん。エスミナはどう。元気?」


「元気って。当たり前でしょ。変なこと訊くのね」


「えっ、とね……。シャルアさんのこと本当にだいじょうぶだったか心配だったの」


 ゆん菜は周りに聞こえないよう、声を小さくした。

 安心してと、エスミナはわらった。


「だいじょうぶ。何事もなかったわよ。初めは、家に衛兵が来るかってどきどきだったけど」


「よかった。シャルアさんは? 今日も一緒だよね」


 エスミナは森のほうを指差す。シャルアはいつものように、ひと目を避けるように木陰にいた。


 ゆん菜はシャルアの表情をうかがう。

 今までと同じように、影がある目をしていた。


 いつか、迫害がなくなったら、別のシャルアさんの顔を見ることができるだろうか。


 ……ねえ、エスミナ。召喚者のための法が承認されたんだよ。

 ……まだムーナサリアと同じ扱いじゃないけど、一歩前進だよ。


 いいたいけど、いえない。

 公布前の法律のことは話したらいけないのだそうだ。


 昨日の夜のことが思い出された。


 ……そうだ。

 優夜先輩が考えた法律が、やっと承認されたんだ。


 優夜先輩は本当にうれしそうだった。


 あの後、優夜とお城のバルコニーから見た月空は、なによりもきれいだった。


 いつか……。


 いつかきっと、わたしと優夜先輩も、エスミナたちも、ムーナサリアが居場所だっていえますように。


               

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