第6章 12話 叶わぬ願い②

 優夜の月の離宮は、穏やかな風が流れていた。


 ゆん菜は、大きく息をついた。


 いつも、優夜と過ごす場所。ここに来るだけで、心から安らげる。


 ゆん菜は月の離宮を見上げる。


 離宮を見ていると、優夜の姿を思い出す。


 淡灯石の光が、まるで優夜の優しさのようで、寄りかかりたくなる。


 しばらく離宮を見つめていたゆん菜は振り返った。


 庭園のほうで物音がしたからだ。


 もしかして、優夜だろうか。


「優夜先輩も、休憩かな」


 ゆん菜はいそいそと庭園を覗く。


 だが、人の姿はない。庭の奥まで行くと、美しい金の髪の人物が現れた。


 優夜先輩……?


 でも、やがて違うと分かった。


 輝く金の髪。優夜よりもずっと、はっきりした金色だ。


「リアナディーテ王妃さま」


「こんにちは。マリーユナ。勝手に入ってごめんなさい。お邪魔しますね。また会えてうれしいわ」


「今日はどうして?」


「音楽会の感想を聞こうと思って。あなた、観に来てくれていたでしょ」


 リアナディーテは優美に微笑んだ。

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