第6章 11話 叶わぬ願い①

 足が痛い……。


 ゆん菜はぐったりと、木にもたれた。


 がんばり過ぎたかもしれない。歩きすぎた。

 

 シャルアに頼まれて、貴族や衛兵たちの、噂話を聞き回っていたからだ。


 召喚者の噂をしていそうな人がいたら、舞台や出店を見るふりをしながら、こっそり近づいていく。


 怪しまれないように、少し離れたところから、聞き耳を立てる。


 あまり近くにはよれないし、周りは騒がしい。離れたところにいる人の噂話を聞くのは、本当に大変だった。


 怪しい行動だから、精神的にも疲れた。


 シャルアの顔を見たものはいないようだった。


 幻青色の目撃者が、衛兵に事情を聞かれていた。彼らも見ていない。


 幻青色を見なかった衛兵たちは、霊力の光自体を見間違いだと思っているようだった。

 目撃者たち、は間違いじゃないと強く主張していた。


 思ったより大事おおごとになっていなくて、本当によかった。


 王族たちの演奏会も、少し開始が遅れただけでだった。


 その後のプログラムも予定通り行われていた。


  ゆん菜がシャルアを逃がしたこともバレていなかった。


 とりあえず、うまくごまかせたようだった。


 足が痛い……。


 ゆん菜は辺りを見回すが、広場のベンチはどこもふさがっている。東屋もいっぱいだ。


 ……優夜先輩の離宮で休もうかな。


「ねえ、メイメイ。優夜先輩の離宮で休もうか?」


 ポケットの中のメイメイに訊くと、メイメイはキュウンとうれしげに顔を出した。


 ゆん菜は人目のない森に駆け込むと、腕輪に霊力を注いだ。

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