第6章 10話 森の中の銀色の刃④

「どうしましたか?」


 衛兵はふしぎそうに、街の人たちを見回す。


「今、森の中で青い光が見えたんです。召喚者の霊力かと思って」


「え? まさか」


 訝しげに、衛兵は森に踏み入る。


 シャルアは瞑想するように目を閉じる。また空間移動かなにかで逃げるんだろう。

 だが、放った霊力で全身が幻青色で輝いてしまう。


 集まっていた街の人々の中から悲鳴があがった。

 衛兵が何人も駆け寄ってくる。


 衛兵たちは腰に帯びていた剣を抜いた。彼らは散らばって、光の位置を取り囲むような配置に着く。


 一番年上らしい衛兵の合図で剣を構え、ゆっくりとシャルアがいる場所に近づいていった。


 シャルアは霊力を放つのを止め、木々に身を潜める。

 音を立てないように森の奥へと進んでいった。


 どうしよう……。


 ゆん菜はおろおろと動き回るしかできない。


 一生懸命考えを巡らせ、蛍の光のような霊力を灯した。


 目くらましのためだ。


 色を青や赤に、変えて木々の間に漂わせる。


 シャルアから離れた木陰に、大きな幻青色の明かりを灯す。


 衛兵たちはその光の方向に向かった。


 ゆん菜は音を立てないようにシャルアに忍び寄る。空間移動の腕輪に霊力を注いだ。


 シャルアの腕をつかみ、一緒に優夜の離宮に空間移動した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る