第6章 8話 森の中の銀色の刃②

 メイメイが唸り、牙を見せる。


 今度はメイメイに向かってナイフが飛んできた。ゆん菜はメイメイの前に回り、霊力でナイフを弾き返した。


 続けて捕縛の霊力を放つ。ナイフ使いは横跳びをし、また姿は見えなくなった。


「メイメイ、行こう」


 ゆん菜はメイメイの脚を引っ張る。


 相手が見えなくなってキュンキュン焦っていたメイメイは、ゆん菜のポケットに飛び込んだ。


 ゆん菜は身を低くし、這うようにして広場のほうにもどった。


 ポケットの中で、メイメイは震えている。


 森の出口が見えてきた。


 ゆん菜は一気に駆け抜ける。


 顔をあげたゆん菜は息を飲んだ。


 森の向こうにある広場で、ちょうど、王族たちが舞台に登壇するところだったからだ。ゆん菜は目が離せず見入ってしまった。


 メイメイが反応する。


 メイメイはゆん菜の脇をすり抜けて王族に向かった。


 ゆん菜は拘束の術を放つが。メイメイは避けた。狼の姿に変わった。


 だが、直前でメイメイが止まる。眠るようにうずくまった。


 そんなメイメイに駆け寄る人影があった。


 エスミナだ。


 エスミナが辺りの様子をうかがいながら、落ち着いた足取りでメイメイに近づく。メイメイは栗鼠の姿にもどっていた。


 周りの観覧者たちは、メイメイが王族を襲おうとしていたとは気づいていないようだ。


 ゆん菜は大きく息をついた。


「ありがとうー、エスミナ。近くにいてくれて本当、よかったー」


「わたしたち、出店を見に来ていたの。シャルアが指輪買ってくれるって」


「今、メイメイを止めてくれたのも……」


「うん。シャルアよ。わたしはあんな術使えないわ」


 エスミナは森の中を目で示した。

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