第6章 7話 森の中の銀色の刃①

 ゆん菜は目を凝らす。


 木と木の間に誰かがいた。だが、ゆん菜が目を向けると、木影に隠れた。


 木々の向こうに、一瞬、紺色の外套が見えた。顔は見えない


 え? と目をみはる。


 またナイフが飛んできたからだ。なぜか、飛んできたのは反対方向だったからだ。


 ゆん菜は、さっきまでナイフ使いがいた場所を振り返る。人影はなかった。


 一瞬で、反対側に移動したように見えた。空間移動だろうか。だが、霊力を放つときの光は見えなかった。


 もう一本ナイフが飛んでくる。


 淡黄色に輝く、霊力で強化されたナイフだ。


 ゆん菜はあれと思い、ナイフ使いの手の辺りを見つめた。


 ナイフ使いの手元は光っていない。何度見ても同じだ。


 ……なんで?


 異世界では霊力を放てば、誰でも手が霊力の色で輝くはずだ。


 そういえば、数日前の盗賊騒ぎのとき、聖女から手が霊力で光らないこともあると聞いた。


 ……あのとき、聖女さまはなんていっていたっけ?

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