第6章 6話 王族たちの音楽会③

 貴族たちは舞台の前の椅子にすわる。


 祭りのために設置された組み立て式の舞台だ。祭りが終われは、簡単に解体できる。

 さっきまではなにかの劇をしていた。 


 祭りの係員らしき人が、席のひとつひとつを席を回っていた。


「今から演奏するのは、王族公爵さまたちと、ララローミナさまたち王女の方々です。途中退席は推奨していません」


 王族公爵……。


 ひいっと、鳥肌がたつ。

 息がつまって、ゆん菜はむせ返った。ケホケホはいつまで経っても止まらない。


 王族公爵とは、王族たちの親戚のことだ。あの王の血縁者たちがやってくる。


「観覧希望ですか? どうぞご着席ください」


 係員がゆん菜を席に促した。


「あっ、ありがとうございます。でも、ちょっと気分が……」


 ポケットからメイメイが出てきた。


 ゆん菜の頭の上に駆け上がり、目を三角にして辺りを見回す。


 ゆん菜を怯えさせる攻撃対象を捜しているのだ。


 ゆん菜はメイメイに目隠しして、ひと気がない森の中に飛び込んだ。


「だいじょうぶだよ、メイメイ。もう怖い人はいないよ」


 メイメイはキュウンとわらう。


 だが、メイメイは今度は森の奥を睨み、毛を逆立た。


 ほぼ同時に、ナイフが飛んできた。細身で銀色の、ナイフ使いのナイフだ。


 メイメイはすばやく狼の姿になる。前足でナイフを払い、地面に叩きつけた。

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