第4章 42話 偽りの情報①

「あのとき、私たちは広間で王の承認を待っていましたよね」


 オルージェやフィナモたちは、記憶をたどるようにしながら、ぽつぽつ話し出した。


「でも、急に王に謁見を申し込んだ者がいて。王は承認を中断して王座の間に向かったんです」


「そして、帰ってきた王は王都で召喚者が揉めた噂を聞いたとおっしゃいました」


「うん。忘れないよ。それで、承認は中止になったんだよね」


 優夜が目を伏せる。

 ゆん菜は聞き漏らさないよう、耳を傾けていた。


「追放されたあと、私たちは知り合いに頼んで揉め事のことを調べました」


「今、ムーナサリア国に召喚者はいないことになってます。いるのは、人目を避けて暮らしている召喚者だけでしょう。なのに、そんな騒ぎを起こすなんておかしいと思ったからです」


「オルージェの思ったとおり、王都の誰に聞いても、そんな騒ぎを知っているものはいませんでした」


「召喚者が捕らえられた、追尾されたという話も聞きません。事件の記録もありませんでした」


「誰かが嘘の情報を流し、法を潰したようなのです」


 優夜の表情が暗くなった。


「ミシュアーナさま、心当たりはありませんか?」


「ごめん、ないよ。……急に謁見を申し込んだ人物は誰? 関係しているような気もするよね」


「それか、その謁見の相手も実在しなかったかもしれません。記録がありませんでした」


 優夜は黙り込んだ。


「なら、父上なら事情を知っているかもしれないね。でも、教えてくれないだろうな。そんなにまでして……」


 優夜は途中で言葉を止める。


 そんなにまでして、法を止めたかった人間がいるんだね。


 優夜はそういいたいんだろう。


 彼はどこか悲しそうな目をしていた。


 父上はきっと教えてくれない……。

 そういったときから、彼の瞳は曇りを帯びた。

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