第4章 37話 ずっと待っていた①

「ミシュアーナさま、お久しぶりでございます」


 玄関から外に出ても、彼はひざまずいたままだった。齢は優夜と同じくらいで、レッドブラウンの髪に黒い瞳だ。


 優夜は立ち止まる。目をみはったまま、動かなかった。目に涙を浮かべ、大きく息をつく


 覚束ない足つきでオルージェの前に立つと、オルージェの肩に手を置いた。


「心配してたよ、オルージェ」


 オルージェは顔をあげ、やっと立ちあがる。


「どうして、連絡を寄越さなかったの?」


 遠くの木陰から、また誰かが姿を現した。オルージェのとなりに立つ。


 こちらは見覚えのある人物だった。


「エレミアさん?」


「エレミア……ッ」


 優夜が押し殺した声をあげた。


 ……オルージェ、エレミア……。連絡をずっと待っていたんだ。


 ……別れ際に約束したのに、いつまで経っても音沙汰なくて……。


 ……世界から消えたのかと思った。


 ……心配で心配で。


 優夜は途切れ途切れに続けた。


「ごめんなさい、ミシュアーナさま。落ち着き先がなかなか決まらなくて」


 そんな優夜に、エレミアは悲しげに目を伏せる。


 やがで、木陰からもう二人姿を現した。

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