第7章 21話 ゆん菜と優夜の居場所④
「もう、やめませんか? 父上」
ハルヴィンはザッハジルアの前に立った。
「父上はいい王になりたいんですよね。いつも自分を殺して、正しい王にと……」
ハルヴィンの言葉に、優夜はとても悲しそうな目をした。
「そして、いい王でいたいから、間違ったこともたくさんするんですよね」
ハルヴィンのいっている意味はよく分からなかった。
「オレも、王族は間違ったことしかできないと思っています」
ザッハジルアは、また玉座にもどる。
身動きもせず、まっすぐ前を向いていた。
なぜこの王は表情を変えないんだろう。いつも鉄みたいにしているんだろう。
ハルヴィンは悲しそうな目をしている。いつも強そうにしている彼にしてはめずらしい。
優夜も同じだった。
ゆん菜はまでそれがうつって、なんだか悲しくなってきた。
「召喚者を認めるのは、間違いでしょう。でも、生き物扱いしないのも、父上が好きな間違いですよね?」
ハルヴィンの言葉で、淡灯官はハルヴィンを振りかえる。悲しそうに、ナイフを下ろした。
「どんどん、罪が重なるだけ。でもたまには罪を軽くしてみませんか? ちょっとだけ楽になりましょう。父上」
淡灯官はハルヴィンにひざまずいた。
ふいに、淡灯の間の方向が淡黄色に光った。
また人影が現れる。
見覚えがある人物だった。
前にゆん菜を見ていて、煙のように消えてしまう女の人だった。
金の髪に紺色のローブ。彼女もやはり淡灯官だったのだろう。
女の人はゆん菜の手を取る。優夜の手を握らせた。
そして、優夜にひざまずいた。王に対するのと同じ行為だ。
ザッハジルアは表情を変えない。
淡灯官たちは、ザッハジルアにもひざまずく。やがて、一緒に淡灯の間に消えていった。
「……考慮しよう」
やがて、ザッハジルアは小さくつぶやく。冷たい表情のまま、王座の間から出ていった。
優夜はまっすぐザッハジルアの後ろ姿を見ていた。
やがて、彼はゆん菜を振り返る。
ゆん菜、と小さくゆん菜を呼んだ。
ゆん菜は優夜に歩み寄る。足元がぐらぐらした。優夜も同じで、崩れそうな足つきだった。
……やっと叶ったね。そういってわらいたいのに、言葉にならなかった。
優夜はゆん菜のとなりに立つ。強くゆん菜の手を握った。
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