第7章 4話 もう一度だけ……④

「ゆん菜……」


 優夜はゆん菜を憩いの間にに連れていく。


 並んでソファにすわると、もたれかかってきた。


 カナルはそんな優夜を見て、そっと部屋から出て行った。


 優夜はそのまま、眠ってしまった。


 ゆん菜は涙が出そうだった。


 わたしのせいだ。


「俺、王子を辞めてお城を出てもいいから」


 しばらくして、目を開けた優夜はつぶやいた。


 ゆん菜がいてくれたら、どこででも暮らしていける、召喚者でも暮らせる静かな土地を探す。


 異世界って、人がいない土地って多いんだよ。

 霊力があれば、大抵のことはできるよ。


 優夜は夢を見るような目をしていた。


 毎日、お互いだけを見て暮らして、夜は星や月を見て過ごす。


 優夜先輩はまた絵を描くだろう。

 わたしは霊力をあげて、家を結界で護る。


 穏やかで、涙が出そうなくらい幸せだろう。


 でも……。


「優夜先輩は、家族が大事でしょ?」


 ずっと感じていた。


 優夜先輩は前世で事故死して両親を悲しませから、今度は大事にしたいんだ。


「だからさ、今日だけ仮病で休まない? お城を忘れるどこかに遊びに行こうよ」


 優夜は瞳をきらめかせる。愛おしそうにゆん菜の頭を撫でた。


「ありがとう、ゆん菜。もう一度だけがんばってみるよ」


『もう一度……』


 優夜はゆん菜に優しく微笑んだ。


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