第7章 3話 もう一度だけ……③

「ミシュアーナさまっ」


 ダーナはグレーの瞳の、真面目そうな青年だった。


 黒いズボンに白いシャツ。飾り気のない服装だ。知的な感じがする。


「ミシュアーナさま、約束の支援はまだですか? このままでは、草園の動物たちは飢えてしまいます」


「私は今、寄付ができなくて。代わりに領主に援助をお願いしておいたけど、届いたよね?」


「届きませんよ。なぜですか? 私たちがなにか失敗をしましたか?」


 優夜は目を伏せる。ただ、ごめんとつぶやいた。


「寄付ができないとは、どういう意味ですか?」


「ダーナはわるくないよ。私が父上に予算を止められていて……」


「あの王は曲がったことはしないお方です。ミシュアーナさまはなにをしたんですか?」


「それは……」


 答えない優夜に、ダーナは悔しそうな顔をした。


「昔、ミシュアーナさまは草園が大好きだといってくださいました。私は本当にうれしかったのに……」


「本当にごめん。必ず父上を説得するから」


 草園主は肩を落として帰っていった。


 ミシュアーナは深く息を落として机に手をついた。


「優夜先輩……」


 ゆん菜は優夜の手を握った。ぎこちない動きで、優夜は握りかえしてくる。


 彼の手は震えていた。

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