第6章 15話 叶わぬ願い⑤
居場所がない……。
彼女が離宮を出ていってどれくらい経っただろう。
ゆん菜はずっとぼんやりしていた。なにをしていいか分からない。
賑やかな祭りの声が聞こえてくる。
ゆん菜は立ち上がって、門のほうに歩いた。人影が見えたからだ。
離宮の門の前にナノンがいた。
「ナノン王子さま」
思わず、ゆん菜は笑顔で駆け寄っていた。
「今夜、ホームパーティーを開きたいんです。ナノンさま、お暇ですか?」
せめて、ナノン王子だけでも……。
ゆん菜は祈る気持ちで聞いた。
「ごめんなさい」
ナノン王子はうつむいた。いまにも泣きそうな顔をした。
「……忙しいですよね」
「そうじゃなくて……」
ナノンは途切れ途切れにつぶやく。
「こんなことになったの、僕のせいなんです」
「え?」
「大好きなミシュアーナ兄さまと、きれいなマリーユナさん。ぼくは二人を応援したかったんです。だから、召喚者の法律の成立を父上にお願いしました」
「そしたら父上は激怒して。マリーユナさんを助手から外すって」
昨日の晩もマリーユナさんを訪ねた。でも、いえなかったと、ナノンはうつむいた。
「僕、もうどうしたらいいか分からないです」
気にしないでください。だから、これからも友達で。
いおうとしたとき、ナノンは逃げるように駆け出した。
ゆん菜は小走りにあとを追う。
門番の衛兵がナノンに気づき、あわてて門を開ける。
姿はすぐに見えなくなってしまった。
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