第6章 3話 サーヴィア祭りの始まり③

 礼拝が終わると、急に辺りは明るくなる。


 街のみんなが霊力を灯すからだ。


 ……すごいっ。


 見慣れた街並みは、優しい明かりで満ちていた。霊力の光は、昼間でもよく見える。


 街を淡黄色に染めていた。


 楽しげな声が行き交う。


 丘の上はがやけに明るい。イベント会場のようだった。


 音楽を奏でる人。奇術のように霊力の光を操る人。

 一番注目を集めているのは、王城の灯りだった。


 王族や貴族たちが光を放っているそうだ。


 エスミナがうっとりと王城を見つめている。シャルアは興味がなさそうだ


 ただ彼は、ずっとメイメイを抱っこしていた。

 たまに頬を緩める。表には出さないが、かなり動物が好きなようだ。


「ねえ、あれ聖女見習いの人たちじゃない」


 エスミナが少し前を歩く集団を示す。聖女のローブを着た数人がいた。


「あっ、みんな……」


 ゆん菜の声で聖女たちは振りかえる。ゆん菜のほうに集まってきた。


「聞いたわよ、ユナ」


「本当にひどいわよね。当日に外すなんて」


 彼女たちは口々にいう。ゆん菜の目は潤んだ。


「ねえ、私たちと一緒に霊力を灯しに行きましょう」


「え?」


「街の人に頼まれて、聖女のみんなで丘に霊力を灯すの。

「ゆん菜の星空を映す術も披露して欲しいわ。きっと人目を惹くもの」


 うれしくて泣きたくなった。


 優夜との約束までは、まだまだ時間があった。ゆん菜は笑顔でうなずいた。

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