第6章 2話 サーヴィア祭りの始まり②

 ゆん菜はぼんやりと、庭園のベンチにすわっていた。


 礼拝堂への道を、大勢の人が進んでいく。


 優夜がくれた髪止めを見つめる。


 今日はこれをつけて、助手を務めるはずだった。


「ユナ。元気出そう。お祭りに行こうよ」


 教育係の聖女の言葉を聞いてから、エスミナはずっと慰めてくれている。


 ……マリーユナ、今日は聖女殿で書類の整理を手伝ってください。


 少し前、ゆん菜のところに来た聖女は悲しそうに告げた。


「え? でも助手をしないと……」


 ゆん菜がいうと、聖女は困ったように目を伏せた。


「あのぬ、実はあなたの助手の件は中止になってしまったの」


「え……」

 

「理由は分からないけど、王様から意見があったらしくて」


 なんで……。


 かばってあげられなくて、ごめんなさいね。マリーユナ。

 今日はお友達と祭りに行って来てもいいわよ。


 聖女は小さな声でつけ加えた。


 ベンチでぼんやりするゆん菜の頭の中には、優夜との計画がぐるぐる巡っていた。


 今日は助手を務めて、ホームパーティーを開いて、誘宵の月の下で優夜先輩を捜す……。


 そのはずだった。


「ユナ、どうする? ……帰る?」


「ううん、礼拝に行きたい」


 礼拝での宮廷聖女たちを見れば、勉強になるかもしれない。


 エスミナは笑顔でうなずいてくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る