第六章 女神の祭りと誘宵の月

第6章 1話 サーヴィア祭りの始まり①

 よく晴れた陽射しが輝く朝、王都は華やかな空気に包まれている。


 ゆん菜も特別な気分で王都の通りを歩いていた。


 ゆん菜の手の中には桜色の髪止めがある。手のひらに乗せて眺めながら、聖女殿へと向かっていた。


 今日はサーヴィア祭りの初日。祭りは三日続く。

 助手としての礼拝を手伝う日だ。


 今日の王都は賑やかだ。大通りには星や月の飾りがつけられ、たくさんの人が行き交っている。


 皆、着飾って、期待に満ちた目をしている。


 楽士が奏でる音楽が流れている。


 手の中の髪止めは、優夜がお祝いにくれた。

 桃色の花の形で、これでヴェールを止める。ヴェールに似合ってすごくかわいい。


 ゆん菜はずっと眺めて歩いていた。


「マリーユナッ」


 遠くから声がした。振り向くと、エスミナが駆けてきた。


「どうしたの? エスミナ」


「お祝いに来たのよー」


 エスミナは息を切らせながら、手を振る。


「その後はね、シャルアと礼拝に参加するの。見守っているからね」


 シャルアは、聖女殿から少し離れたところに立っていた。他人を避けるように、木陰にいる。


 ゆん菜たちには背中を向けていた。


「気にしないで。シャルアは人嫌いだから。特に王城近くだし。機嫌がわるいの」


「来てくれただけでうれしいよ」


「あのね、シャルアがこんな人が多いことに来るのはめずらしいのよ」


 きっと、ゆん菜がいるから来たんだよと、エスミナはうれしげにわらう。


「シャルアはね、ユナのこと大事な仲間だって。あれでも、ユナのことが好きなのよ。……じゃあ、礼拝でね」


 エスミナが手を振ったときだった。


 教育係の聖女がゆん菜のほうに歩いてきた。

 なぜか、彼女は悲しげな顔をしていた。

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