第5章 30話 それでも祭りを華やかに③

「いい考えだねっ。わたし、また霊力で星を作るね」


「ありがとう。頼むよ」


 実はねと、ゆん菜はチェストを開けた。中から小箱を取り出す。


「見て見て、優夜先輩っ。パーティーの飾りを作っていたんだよ」


 ゆん菜は紐につけた紙細工の花を見せた。自作のガーランドだ。


 ゆん菜が元いた世界では、ホームパーティーといえばガーランドだった。


 これを壁に吊るして部屋を飾るのだ。


「花のガーランドだよ。桜にマーガレットにチューリップ。元の世界の花の形にしてみたの」


 優夜はきれいに目を細めた。


「すごくいいよ、ゆん菜。きっと喜んでくれるよ」


 ……よかった。


 もし、王妃さまなら味方になってくれたら。優夜先輩も少しは楽になる。


 うんと華やかにしよう。十本。ううん、二十本は飾ろう。


「楽しくなってきたねっ」


 ゆん菜は優夜の手を握る。優夜も強く握りかえしてきた。


 どうか、優夜先輩が悲しみませんように。

 わたしたちの願いが叶いますように。


 ゆん菜は窓から星空を見つめる。ちょうど、月が見えていた。


 あれ、と、目を凝らす。

 一瞬、木々の間に人影が見えた気がしたからだ。ナノンに見えた。


 だが、霊力で庭に明かりを灯しても、誰の姿もなかった。


 気のせいだろうか。ナノンだったら、黙って帰ったりしないだろう。


 ……どうか、優夜先輩が悲しみませんように。

  わたしたちの願いが叶いますように。


 ゆん菜は窓の外の月に向かって祈った。

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