第5話 29話 それでも祭りを華やかに②

「サーヴィア祭りといえば、誘宵の月伝説ってあるんだ。永遠に一緒にいられる祝福をもらえるんだ」


「知ってる。祭りの夜、わざとはぐれて、お互いを見つけ合うんだよね」


「俺の、いつかゆん菜とのことを、誘宵の月に導祝福してもらおうと思ってたんだ」


 優夜はきれいにわらった。


 ……わたしも、絶対に優夜先輩を見つけたい。


「宵って、日が暮れてから少しの時間のことなんだ。俺は礼拝のあとの時間は空いていて、その後、舞踏会に出るんだよ」


「そうだよね。優夜先輩は忙しいよね」


「でも、ちょうど宵の時間は空いてるよ。舞踏会のあとからは王族も自由時間だし。そのとき、慰労会を兼ねたホームパーティーを開いて、母上とナノンを呼ぼう」


「ありがとう。優夜先輩っ」


 優夜は本当にうれしげに、月のようにまぶしくわらった。


「あっ、ねえ。なに描いていたの?」


 ゆん菜は優夜の手元を見た。


「天文部にいたとき見た、天体望遠鏡で見た星のスケッチだよ」


「天体望遠鏡?」


「ほら、前の世界では望遠鏡で星を大きく見ることができたじゃないか」


「ああ、土星の輪とか、月のクレーターのこと?」

「忘れないように描いておこうと思って。ホームパーティーで母上にも見せたいし」


 優夜先輩は強いなあ……。

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