第5章 28話 それでも祭りを華やかに①

 体を包んでいた、淡黄色の霊力の光が消えていく。


 空間移動で、家にもどってきたゆん菜は、リビングの灯りがついていることに気がついた。


 覗くと、優夜がスケッチブックになにかを描いていた。


「おかえり、ゆん菜」


 優夜は笑顔で振りかえる。

 夕方の王城での悲しげな様子を、全然感じさせない笑顔だ。


 ゆん菜は彼に合わせて、笑顔をつくった。夕方のことを訊ける雰囲気ではなかった。


「ねえっ、優夜先輩」


 ゆん菜は優夜の前に立つ。


 お城のことは後にして、助手のこと、サーヴィア祭りのことをだけ話そう。


「聞いて聞いてっ」


「え? なにかな」


 優夜はうれしげにゆん菜を見つめる。


「わたしね、サーヴィア祭りの礼拝で、宮廷聖女さまの助手になったの。」


 え? と、優夜はみはる。やがて、想像以上の笑顔を見せた。


「すごいじゃないか。ゆん菜」


「でしょ? わたし、がんばるよ」


「助手の役目を無事終えたら、ホームパーティーで母上に報告しようか」


 いい考えっ。さすが優夜先輩だ。

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