第5章 26話 優夜の哀しみ②

 広い部屋だ。ひと目で王城の部屋と分かる豪華さだった。


 ハルヴィンの部屋だろうか。


「ちょっと来いよ」


 ゆん菜をひきずって、ハルヴィンは部屋を出た。階段をあがっていく。


 なにか、争っているような声が聞こえてきた。


 ……自覚がないな。


 ……お前は昔のお前にもどるべきだ。


「できませんよ、父上。召喚者の苦しみは国民の比ではありません」


 優夜の声だった。


 ゆん菜はどきりとする。


「外来族は民ではない」

「召喚者を呼んだのは私たちです。責任は取るべきでしょう」


「……一週間、私謁停止」


 王の言葉は、優夜相手でも迫力があった。とても冷たい。


 やがて、優夜は本当に悲しそうな顔をして部屋から出てきた。離宮にいるという噂は間違いだったらしい。


 優夜に、ハルヴィンとゆん菜は見えていないようだった。ハルヴィンが結界を張っているらしい。


 誰かが階段をあがってきた。初老の男性だった。


 優夜と顔を合わせて眉をひそめる。


「大臣。父上に謁見?」


「そうですが。ミシュアーナさまはまた王と揉めたんですか?」


「大臣、西の国との交渉がうまく行かないっていってたよね。俺ね、実はあの国の王子と、絵画の鑑賞会で知り合ったんだ。協力できると思うよ」


「そんなことより、国王との信頼関係を保ってください」


 大臣はため息をつく。


 優夜は悲しげに目を伏せた。

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