第5章 3話 ゆん菜のドレスと優夜の正礼装③

「ねえ、先輩。もしかして、王妃さまは召喚者を認めてくれたの?」


 優夜に訊くと、首を振る。


「そういうことではないと思う。母上は国だけに尽くす人だから」


 ……ただ、俺のためにゆん菜を冷遇できないんだと思う。

 味方になってもらうチャンスではあるよ。がんばってみよう。


 つぶやく優夜は、急に不安げな顔をした。


「嫌な思いをするかもしれないし、辞退してもいいよ、ゆん菜」


「ううん、行くよ。せっかくの機会だもん」


 一瞬、鼓動が早くなった。

 王族と聞いただけで、体が震え上がったころが思い出される。


 だが、王妃は王と違って、とても優しいという噂だ。それに、招待してくれたことはやっぱりうれしい。


「それからね、ナイフ使いのことは心配しなくていいよ」


 優夜は一度立ち止まり、優しくわらう。


「母上のところだから、警備は最上級だし。カナルも見張ってくれているし」


「カナルさんも来てくれるんだね」


「うん。それにカナルが霊力で罠を張ってくれた。俺はね、この機会にあいつを捕縛できればいいと思っているんだ」


「捕縛……。だいじょうぶ? なんだか危ないよ」


「罠にカナルは近づかないからだいじょうぶ。もし、城内の人間だったら、早く対処しないといけないしね」


 ゆん菜は黙り込んだ。少し怖くなった。


 前の世界で優夜と死別したことが思い出される。


 ……危ないことは嫌いだ。


 行こう、ゆん菜と、優夜は手を差し出す。


 ……もう二度と、悲しいことは起きませんように。


 ゆん菜は優夜の手を取った。

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