第五章 王妃の夜会

第5章 1話 ゆん菜のドレスと優夜の正礼装①

「ゆん菜、準備できた?」


 優夜がドアをノックした。もう何度も同じことを訊いてくる。


「まだでございますよ、ミシュアーナさま」


 ゆん菜の代わりにノアラーナが答える。

 彼女はカナルの姉だ。ゆん菜の着替えを手伝いに、わざわざ優夜の離宮まで来てくれた。


「早くマリーユナさまのドレス姿を見たいんですよね。分かりますけど、我慢して下さい」


 ドレスといっても、ワンピースに近いゆったりとしたものだった。ただ見た目が華やかなだけだ。


 優夜が用意してくれた。

 桃色のドレスで、フリルは白だ。スカートには花の飾りがつけられている。


 それに月をモチーフにしたネックレス合わせた。


 着替えの手伝いなんて初めてで、緊張してしまう。ドレスを着るのがこんなに大変だなんて、思っていなかった。


 しかも、突然、こんな正装をすることになった。気持ちがついていかない。


「さあ、ミシュアーナさま。お待たせしました」


 ノアラーナがドアを開けると、優夜はそっと中を覗いた。


 戸惑いがちの視線を、ゆん菜で止める。


「きれいだよ、ゆん菜」


 まぶしそうに目を細めと微笑む。しばらく、ゆん菜を見つめていた。

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