第4章 33話 月灯石の光の回廊で⑥
「バカ王子の言説だから、説得力がありませをが……。あなたはこの国では居場所がない。それがこの国の方針です」
ラヴィエが伏せ目がちでつぶやく。
「残念ですけど、他に居場所を見つけたほうがいいでしょう」
「でも、召喚したのはムーナサリア人です。わたしはこの国にいたいんです」
ゆん菜の言葉に、ラヴィエは応えない。
「今日はもうこの辺にしておきましょう。聖女たちから離れると、不審がられますよ」
ゆん菜は辺りを見回す。
いつの間にか、聖女たちの姿は見えなくなっていた。
ハルヴィンは渋々というように、また回廊を歩き出した。
ゆん菜はしばらくの間、立ちつくしていた。
やがて、歩き出す。そのとき、なにかがゆん菜の脚をかすめた。
痛みが走る。
空気を裂いて、ナイフが地面に刺さった。前にゆん菜を襲った銀色の細身のナイフだった。
なんで?
たいした傷ではない。ゆん菜の治癒の霊力ですぐに治った。
なんで、警備が厳重な王城内に、あのナイフ使いがいるの?
もしかして、元々王城の関係者?
でも、ナイフを使うのは、正式な教育を受けていない人で、身分は低いはずなのに。
ゆん菜は辺りを見回す。
人影はどこにもなく、回廊は静まりかえっていた。
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