第4章 32話 月灯石の光の回廊で⑤

「わたしはわるくないです。ここには実習だから来たんだもん。好きで来たんじゃないもん」


「だったらすぐ帰れ。棺桶付けて見送ってやるよ」


「ハルヴィン王子、本性を出しすぎですよ」


 ずっと隣で黙っていたラヴィエがため息をついた。


「特に城内では言動に気をつけてください。権威が失墜します」


「権威を見せる必要あるのか? 気楽な第二王子なのに」


「あります」

「はいはい、分かりました」


 ハルヴィンはひと呼吸置いて、ゆん菜に向き直った。


「おい、そこの女」

「な、なんでしょう?」


「外来族は来るな、食べるな、増えるなだ」


 い、意味が分からない……。


「なんで、聖女見習いの衣装を着てるんだ? 

それは税金で作った物だぞ」


「今度はそっちですか、ハルヴィン王子」


「中には税金払ってる召喚者もいるかもしれないけど、違法だから無効だ。つまり、お前らに使う資格はない」


「本当に、ただのいじめじゃないですか。王子らしくしてください」


 ハルヴィンは横目でラヴィエを睨む。

 ラヴィエはハルヴィンの視線を、正面から受け止め、二人はしばらく睨み合った。


「この国には、お前らが触れていいものはないんだ。衣食住、全て違法だ。国にいる権利もない」


 ……り、理不尽。

 理不尽すぎてわけが分からなくなる。


 召喚者を呼んだのは、ムーナサリア人なのに。どうして、少しの心遣いもないんだろう。

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