第4章 30話 月灯石の光の回廊で③

 ハルヴィンも、聖女たちの列に気づく。


 ゆん菜は縮み上がった。


「ご機嫌よう、ハルヴィン王子」


 教師役の聖女は立ちどまり、ハルヴィンにお辞儀をする。見習い聖女たちも後に続いた。


「めずらしいね。今日はどうしたの?」


「衛兵の皆さんとの合同実習で、登城を許されました」


 メイメイが毛を逆立てて、ポケットから出てきた。


 ゆん菜はメイメイに目隠しして、サッと柱の影に隠れた。相手が見えなければ、メイメイは落ち着く。


 ゆん菜はポケットの入口を開けて、指で示す。メイメイは仕方なさそうにポケットに潜り込んだ。


 守護獣のときと違って、メイメイは過剰にゆん菜を護ろうとはしない。


「でも、いつもありがとうね、メイメイ」


 このまま隠れていて、ハルヴィンが通り過ぎるのを待とう。


 息を殺して、ゆん菜はじっとしていた。


 誰の足音も聞こえなくなったとき、様子を伺おうと顔を出した。


「なにやってんだ、お前」


 いきなり、背後から声がした。ゆん菜は悲鳴をあげて飛び退いた。


 つややかなダークブラウンの髪、蔑むような冷たい瞳。あのときのままのハルヴィンが目の前にいる。


 あの晩の恐怖が蘇り、気分がわるくなってきた。

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