第4章 22話 ムーナサリア王の帰城①

「だ、だいじょうぶよ。メイメイ。わたし、怖くないから」


 メイメイは問うように足を止める。


「メイメイ、元にもどろう。お菓子あげるから」 「あの人はだめですよ、メイメイ。マリーユナさまが窮地に陥ります。やめましょう」


 エスミナとカナルが口々にいい募る。


 メイメイは泣きそうな顔になった。


「わたし、いつも感謝してるよ。ありがとう。大好きだよ。ポケットにもどっていいよ」


 ふしぎそうにゆん菜を見ていたが、やがてポケットに潜り込んだ。不安気にきゅんきゅん鳴いた。


 やがて、蹄の音がはっきりしてきた。馬に乗った集団が庭園前の道を進んでいく。


 最後尾に、兵士に守られるようにして馬を駆る男の人がいた。一人だけ、高級そうな衣装を身につけている。灰色を基調とした服だ。


 彼がムーナサリアのザッハジルア王だろうか?


 優夜先輩のお父さん……。


 ゆん菜はつい、食い入るように見た。怖くても、やっぱり顔は気になる。


 だが、すぐに後ずさった。


 ザッハジルア王は般若のような目をしていた。


 そして無表情だ。姿勢を崩さず、ただ前にだけを見て馬を駆る。


 ……て、鉄?


 思ったよりも若い印象だった。


 ダークブラウンの長い髪に、灰色の瞳。ハルヴィンによく似ている。


 年齢に似合わず、迫力がものすごい。


 威圧感でできているようだった。まるで、鉄でできた人間だ。そして、闇の底のような暗い雰囲気を背負っている。


 雷に打たれたような衝撃が走った。


 となりでエスミナも唖然としていた。


 メイメイがまた飛び出してきた。

 カナルが、失礼します、といい、メイメイになにか術をかける。


 メイメイはやけにリラックスした顔をし、カナルのひざに寝転んだ。

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