第4章 21話 王城の庭園③

「あっ……」


 ふいにカナルが声を上げた。


「えっと、どうしましょう、マリーユナさま、エスミナさま」


 慌てた様子で立ち上がる。おろおろと歩き回った。


「か、隠れましょう。隠れたほうがいいですね」


 カナルはゆん菜たちの手を引いて、植え込みの影に駆け込んだ。


「どうしたんですか? カナルさん」


「……王さまのご帰城なんですよ」


「え?」


「馬の蹄の音が聞こえませんか? あの数は王さまのものです」


 ……!


 雷に打たれたような気分だった。


 そ、そうだった。王城なら、王さまがいるっ。


 雲の上の人過ぎて、遭遇することなんか想像していなかった。

 全身が総毛立つ。ゆん菜はカナルの後ろに回る。背中を向けてすわり込み、目を閉じた。


「ユナ、ユナ。だいじょうぶよ」


 エスミナが優しく背中を撫でてくれる。


「マリーユナさま、メイメイがっ」


 ゆん菜はぎょっとして振り返る。狼の姿になったメイメイがいた。


 だが、王はまだ姿を現していない。メイメイは攻撃対象が分からなくて、うろうろしていた。

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