第4章 19話 王城の庭園①

 王城の敷地面積は広い。ゆん菜がいた高校の、十倍はあるだろう。


 敷地の半分は森や庭園だ。他には小さな湖や川、図書館や病院がある。


 カナルが案内してくれた庭園は、低木と草花が植えられている。皆、風毛獣が好む蜜を持っているそうだ。

 そこに風毛獣がふわふわ動いていた。


「風毛獣、かわいいー」


 ゆん菜とエスミナは、きゃあきゃあ騒いでしまう。カナルも頬をほころばせた。


 ゆん菜たちは隅にあるベンチから、風毛獣を見ていた。


 風毛獣は怖がりだから、こちらからは近づかないほうがいいそうだ。


 たまに寄ってくる風毛獣がいる。


 そんなときは、蜜でつくった飴を渡すと、うれしそうに受け取って帰っていく。


「いい庭園ですね。思ったより優しい場所です」


 エスミナは笑顔で辺りを見回した。


「この庭園は、ミシュアーナさまと王妃さまで整備しました。二人とも自然が好きなんです」


「カナルさまは、ミシュアーナさまの話をするとき、うれしそうですね」


「私たち貴族の、憧れの方ですから」


「分かります。街でも人気なんですよ」


「ありがとうございます。私は早くミシュアーナさまにお仕えするのが夢でした。……マリーユナさまのおかげで、やっと夢が叶ったんです」


「わたしの?」


「はいっ。マリーユナさまの護衛が必要ということで、数日前、お声をかけてもらいました」


 カナルの瞳はきらきら輝く。

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