第4章 17話 ゆん菜の護衛⑤

「あっ、そうだ。マリーユナさま」


 ふいに、カナルがゆん菜を振り返った。


「神殿の庭の蜜果の実が熟したそうなんです。庭園に行く前に、もらいに行きましょう」


 カナルは笑顔で歩き出した。


 彼は無邪気で、わらうと齢より幼く見える。周りを癒やす笑顔だ。

 

 蜜果は林檎に似た果物だ。


 林檎よりも蜜がたくさんで、本当においしい。


 神殿は聖女殿のとなりだ。しばらく歩くと、後ろから誰かがゆん菜を呼んだ。


「マリーユナァー」


 振り返えると、エスミナが手を振って走ってきた。


「カナルさま、こんにちは」


 エスミナは、聖女見習いになったゆん菜を、ほとんど毎日訪ねてくれる。


 召喚者たちのためにも、ゆん菜が宮廷聖女になるのを応援してくれるのだ。


「お疲れさま、ゆん菜。聖女さまに差し入れをするって、中に入れてもらったの。今日はシロップケーキよ」


「シャルアさんは元気?」


「うん、元気よ。彼も連れてきたいんだけと、なかなか説得できなくて……」


「シャルアさんは仕方ないよね……」


 シャルアはゆん菜以上に王族が苦手らしい。王族に権利を与えられないせいで、ずっとつらい目にあってきたそうだ。

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