第4章 12話 針綿毛の聖女さん⑥

「じゃあ、マリーユナ。また明日ね」


 見習い仲間たちが笑顔で手を振る。ゆん菜も振り返すと、彼女たちは門から出ていった。


 ゆん菜は中庭をぶらぶらする。


 今日の訓練は半日で終わった。家に帰ってもいいが、夕方までは一人だ。


 優夜にも勧められ、優夜の従者と過ごすことにした。


 カナルという伯爵家の三男だ。


 ゆん菜はベンチにもたれると、深呼吸した。


 今日は疲れた。


 盗賊の件で、聖女殿で過ごすのが気まずかった。


 盗賊の姿が思い出される。どきどきしてきた。


 あの盗賊が持っていたナイフ……。


 ナイフというと、思い出すことがある。ハルヴィンの光の檻に囚われた晩のことだ。


 あの晩もナイフを見た……。


 ゆん菜がいた檻に、ナイフが何本も投げられた。

 剣よりも細くて柄がないから、短剣ではなくてナイフだったと思う。はっきり覚えているわけではないが。


 そういえばと、ゆん菜は目を見開く。


 あのナイフのことは、まだ優夜に話していなかった。優夜が王子だったことで頭がいっぱいになっていた。


 あれは誰だったんだろう。家に帰ったら、優夜に相談してみよう。


 捕縛するか、眠らせる……。


 すごくいいことを聞いた。聖女はそういう人道的な仕事た。


 聖女殿で習えるのは、いつだろう。またなにかある前に、身につけておきたい。





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