第4章 9話 針綿毛の聖女さん③
メイメイは駆けながら狼に似た姿になり、茂みに飛び込んだ。
茂みの中から、男の悲鳴が上がる。
やがて、茂みの中から誰かが飛び出してきた。脚にメイメイが噛みついている。
え?
もしかして盗賊?
ゆん菜は目をみはった。
男がカバンからナイフを取り出したからだ。メイメイに向かって振り上げる。
「メ、メイメイ。逃げてっ」
男の脚を離し、メイメイは飛び退った。
男は門のほうに駆け出した。だが、衛兵の姿に気づくともどってくる。
騒ぎを聞きつけた衛兵たちが集まってくる。
彼はまたナイフを構えると、ゆん菜に向かってきた。
ゆん菜は悲鳴を上げた。 無意識に霊力を放ちかけ、あわててそれを堪えた。
またうっかりと、幻青色の霊力を出すところだった。
数歩下がって気持ちを落ち着ける。
盗賊がナイフを振りかざしたところで、やあ、と霊力を放った。
男のほうは霊力を持たないようで、防御もしない。ゆん菜の膨大な霊力は、遮るものなく男の全身を包んだ。
弧を描いて、盗賊の体は屋根の上に飛んていく。彼のポケットからなにかが落ちてきた。霊石だった。
体を強打して彼は気絶する。
ゆん菜は霊力の糸で、盗賊を屋根に固定した。
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