第4章 8話 針綿毛の聖女さん②

 昨日の午後の休憩の時間。


 中庭のベンチでおやつを食べていたときだ。


「聖女殿の方ですね。怪しい人間を見ませんでしたか?」


 一人の衛兵が駆けてきて声をかけられた。


 怪しい人間と聞いて、ゆん菜の顔は引きつりそうだった。


 通報かなにかがあって、召喚者を探しているのかと思ったからだ。


 王城で働く者は、みな優秀だ。


 ゆん菜は、いつか彼らに召喚者だと見抜かれるんじゃないか。

 いきなり捉えられるんじゃないか。と、いつも、びくびくしていた。

 

 見ていないと答えると、衛兵はもどっていく。


「なんだろうね。しょ、じゃなくて、凶悪犯でもいるのかな?」


 訊くと、聖女見習いの仲間たちはわらう。


「マリーユナって怖がりよね。だいじょうぶ。泥棒ですって。神殿から霊石を盗んでいった男がいたそうよ」


「昨日の夜のことだし、もういないと思うわ。でも、念の為、見回っているのよ」


 ゆん菜は心底安心した。


 なにかあると、召喚者関連だと思ってしまう。被害妄想だろうか。


 ポケットの中のメイメイが、心配そうにゆん菜を見る。


「だいじょうぶだよ、メイメイ」


 だが、メイメイの表情はだんだん険しくなる。

 急にポケットから飛び出すと、中庭の植え込みのほうに駆けていった。

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