第4章 8話 針綿毛の聖女さん②
昨日の午後の休憩の時間。
中庭のベンチでおやつを食べていたときだ。
「聖女殿の方ですね。怪しい人間を見ませんでしたか?」
一人の衛兵が駆けてきて声をかけられた。
怪しい人間と聞いて、ゆん菜の顔は引きつりそうだった。
通報かなにかがあって、召喚者を探しているのかと思ったからだ。
王城で働く者は、みな優秀だ。
ゆん菜は、いつか彼らに召喚者だと見抜かれるんじゃないか。
いきなり捉えられるんじゃないか。と、いつも、びくびくしていた。
見ていないと答えると、衛兵はもどっていく。
「なんだろうね。しょ、じゃなくて、凶悪犯でもいるのかな?」
訊くと、聖女見習いの仲間たちはわらう。
「マリーユナって怖がりよね。だいじょうぶ。泥棒ですって。神殿から霊石を盗んでいった男がいたそうよ」
「昨日の夜のことだし、もういないと思うわ。でも、念の為、見回っているのよ」
ゆん菜は心底安心した。
なにかあると、召喚者関連だと思ってしまう。被害妄想だろうか。
ポケットの中のメイメイが、心配そうにゆん菜を見る。
「だいじょうぶだよ、メイメイ」
だが、メイメイの表情はだんだん険しくなる。
急にポケットから飛び出すと、中庭の植え込みのほうに駆けていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます