第4章 5話 優夜の離宮へ②

 離宮も白い石で建てられていた。


 三つの尖塔がある、小さなお城のような建物だ。透き通った淡灯石の割合は、王城よりもずっと多い。


 その造りは、聖女殿のように繊細だ。ゆん菜は入口の飾り石を見上げる。


「この石は三日月、この石は満月の形をしているんだね?」


「うん。この離宮はね、俺をイメージして改装したんだって」


 月の離宮……。


「月は優夜先輩によく似合うよ。優夜輩は月色の王子さまなんだよね。」


「じゃあ、気に入ってくれた?」


 ゆん菜は強くうなずき、うっとりと月の離宮を見つめた。


「よかった。ここは誰もいないから安心だよ。なにかあったとき逃げ込める場所が、王城の敷地内にもあればいいと思ったんだ」


 月の離宮の飾り石は、月の満ち欠けが表現されていた。東から西へ、ゆっくりと月は満ちて欠けていく。


「霊石の腕輪に仕掛けを加えておいたよ。腕輪でドアは開くし、中に直接、空間移動もできるからね」


 離宮の前には庭園があった。


 いろいろな種類の花が、野原のようにたくさん咲いている庭園だ。


 きちんと手入れされている。

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