第4章 4話 優夜の離宮へ①
「お疲れさま、ゆん菜」
ゆん菜が優夜の前に立つと、優しい眼差しを落とす。
「聖女殿はどう? 厳しい先生もいるよね。だいじょうぶ?」
「うん。だいじょうぶ。みんな優しいよ。優夜先輩は?」
「今日の訓練は予定より早く終わったんだ。せっかくだから、ゆん菜とくつろごうと思って」
「じゃあ、早く帰ろう」
いうが、優夜は立ち止まったままでいた。
「今日はちょっと寄り道していかない? 特別な場所があるんだよ」
「特別な場所?」
「この森のはずれに俺の離宮があるんだよ」
「行きたいっ」
ゆん菜は優夜の腕に飛びついた。
優夜は森を進んでいく。ゆん菜は笑顔で後を追った。
森の中は小道が何本もあって、意外と入り組んでいた。優夜は慣れた様子で迷わず進んでいく。
暮れかかった夕刻の中、王城の敷地内は、霊石から放たれる霊力で明るい。
王城の霊石の仕掛けは特別だ。
霊力の光は、星が降るように落ちてくるのだ。
お城の尖塔の少し上くらいから現れて、ゆっくりと落下する。
落ちた光は地面に積もるが、明るくなり過ぎると消えていく。敷地を巡る小川に落ちた光は、透き通った本当にきれいな色になる。
「わたし、この光好きだよ。星を見ると、天文部のことを思い出すもんね」
「俺もだよ。なつかしいよね」
しばらく歩くと、道の向こうに建物が見えてきた。
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