第4章 2話 聖女殿とみかん色の風②

 優夜先輩……。


 ゆん菜は西に目を向けた。聖女殿のとなりには神殿があり、その向こうには王城がある。


 王城は真っ白な建物で、尖塔の屋根は月色だ。


 だが、優夜がいる場所だと思うと、前のように体は震えない。


 ……とはいかないが、たまには平気になることもある。


 キューンと声がした。


 お腹のポケットから、メイメイが顔を出していた。ゆん菜の怯えを感じたんだろう。


 メイメイは変わらない。ゆん菜はうれしくなって、メイメイを撫でた。


 今のメイメイは守護獣ではない。それでも、ゆん菜を慰めてくれる。


 契約していないのに、一緒にいてくれるのだ。今ではもう友達だ。


「帰ろうか、メイメイ」


 今日は疲れた。


 見習いで通いはじめて今日で三日。


 霊力だけではなく、経典や、礼儀作法や。学ぶことは山ほどあった。


 帰ろう。

 優夜先輩との、あの赤い屋根の家に。


 聖女見習いは、聖女殿に寄宿もできるが、ゆん菜は家から通うことにした。 華やかな帝都は苦手だ。


 優夜とのあの小さな家が大好きだ。


 村と王都は徒歩で一日の距離がある。だから優夜から前にもらった霊石の腕輪で、空間移動して通っていた。

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