第3章 30話 満月の森 月色の優夜④

「もう、いわないでいいよ、先輩」


 優夜は目を閉じて、ゆん菜にもたれた。


「今日一日、これからのことを考えていたんだけど。……俺、城を出るよ」


「え……」


「俺たちのあの家で、静かに暮らそう」


 いいの?


 ゆん菜はいいかけてやめる。優夜は本当に悲しそうだった。


 ハルヴィンの顔が頭に浮かんだ。エスミナとの約束も思い出す。


「そんなことしないでいいよ。優夜先輩。それより、お城でがんばらない?」


 ゆん菜は笑顔をつくった。


「先輩だって、エレミアさんたちを助けたいでしょ? 法律も作りたいよね。わたしも手伝うよ」


 だが、優夜は顔を曇らせる。うつむき、月色の髪が頬にかかった。


「いいよ、ゆん菜。そんなことしたら、ゆん菜はいつか、城で暮らすことになるんだよ」


 し、城で暮らす。


 ひいっ、と、鳥肌が立った。

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