第3章 28話 満月の森 月色の優夜②

「夜空を見よう、ゆん菜。いつまでも見ていよう」


 優夜は夜空を見上げる。長いまつ毛に、星の光が灯っていた。


「異世界の星空って、本当にきれいだよね……」


「うん。この澄んだ空気は、国の誇りだよ」


 優夜は夜空に手を伸ばす。


「よく考えると、俺たちが星を見る時間は長いよね。ねえ、ゆん菜は昔のこと覚えてる?」


「異世界に召喚されたときのこと?」


「遠い遠い、もっと昔の想い出」

 優夜はなつかしそうに、青い瞳を細めた。


 昔……。


「天文部の想い出? わたしと先輩が出逢った場所だね」


 元の世界での想い出が、ふいに胸を締めつける。


 今、優夜といるこの異世界が一番愛おしい。でも、たまに元の世界がたまらなくなつかしくなる。


「元の世界では、わたしと優夜先輩で屋上で星を見たよね」


「流星群がきれいだった」


「高原に合宿に行ったよね」


「なつかしいな。……元の世界だけにあるもの。校舎に教室に、学園祭に修学旅行」


「黒板」


「地球儀にプラネタリウム」


 いい想い出だよねと、ゆん菜はわらい返した。

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