第3章 26話 ミシュアーナとハルヴィン③

「俺はこのごろ思うんだよ。強い権力を持つ者は、優しくあるべきなんだって」


「え……」


「ハルヴィンだって、本当はそう思ってないか?」


「そんなわけないだろ。強くある父上の考えが一番だ」


「優しい法は大事だよ。……ゆん菜のことが関係ないとはいわないけど、召喚者のための法があってもいいんじゃないかって思ったんだ」


「召喚者は民を脅かす。王族なんだから自分の気持ちは流して、民に尽くすべきだろ?」


 ハルヴィンの目に悲しみがよぎった。


「……兄上、オレたちの絆は?」


「すごく大事だよ。でも、ゆん菜も大事なんだ」


「オレたちとの歴史のほうが長い」


「ゆん菜とは、前世からの絆だよ。ゆん菜は前世で俺の恋人だったんだ。ずっとずっと逢いたかったんだよ」


「なにいってるんだ?」


「俺たちは離れられないんだ。ゆん菜はだけは信じられるんだよ」


「前世? 召喚者と?」


「前世で別れたときに、迎えに行くと約束した。だから、俺はゆん菜を召喚したんだよ」


「ミシュアーナ自身が、召喚者を呼んだ……」


 ハルヴィンの表情が悲しみで歪む。

 さっきまでの凛とした王族の顔と違う。


「続きは今度にしよう。今日は帰るよ。ゆん菜を休ませたいんだ」


「なんだよ、それ」


「ごめんな、ハルヴィン」


 オレは帰らないと、ハルヴィンはうめいた。


「兄上の目が覚めるまで、オレはここを動かないからな」


 優夜はゆん菜の腕輪に触れる。パンッと音がした後、霊石を包んでいた膜のような物が割れる。


 もう一度、優夜は霊力を注いだ。


 霊石から光があふれ、ゆん菜たちを包んた。ハルヴィンが呼び止める声がする。


 気がつくと、ゆん菜は家の避難部屋にいた。

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