第3章 23話 月のとばりに包まれる②

 ……夢?


 月明かりの中、優夜の月色の髪が光に透ける。


 信じられなかった。優夜だった。

 佇んでいる優夜は優しい目をしている。肩にメイメイを乗せていた。


 ふわっととばりを動かして、もう一度ゆん菜を包んだ。


 とばりを出したのは、ハルヴィンでなく優夜だった。


 ゆん菜はぎゅっと、とばりにしがみついた。月のような色だ。端のほうが光の粒で輝いている。


「優夜、先輩……っ」


「怖い思いをしたね。教会ではゆん菜が帰らないって噂になってたし、町でメイメイは見つけるし。なにがあったのかと思ったよ」


 ゆん菜は優夜にしがみついて泣き続けた。


 ああ、優夜先輩だ。


 だから、とばりが怖くなかった。とばりの霊力を見ていて、優夜先輩を感じたからなんだ。


「やっと見つけたよ、ゆん菜」


 月色のとばりが輝きを増す。体が暖かくなり、痛んでいた足が軽くなった。


「だいじょうぶ。もうだいじょうぶだよ」


 優夜は一瞬、声を潤ませた。少しの間、手もふるえていた。


 彼はとばりでゆん菜と優夜を囲み、周りの風景を霞ませた。


「なんで……」


 やがて、声が聞こえた。ハルヴィンだった。

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