第3章 5話 夜闇の森で⑤

 ゆん菜は地面を這い、木々の間まで来たところで、体を起こして駆け出した。


 森は真っ暗で何度も足を取られる。


 なんで?

 誰? ハルヴィン王子?


 足が木の根に引っかかる。ゆん菜は動けなくなった。


 光のナイフが一斉に飛んでくる。


 もう、だめっ。


 ゆん菜はぎゅっと目をつぶった。


 息がつまる。避けようとは思うのに、体がどうやっても動かない。


 そのとき、なぜか辺りが暗くなった気がした。まぶたを閉じていても、まぶしかったムーナサリア色の霊力の消えたのを感じる。


 ナイフがバラバラと、地面に落ちたような音がした。


 ゆん菜は手を伸ばす。だが、体のどこを探っても、ナイフは刺さっていなかった。


 もう一度見ても、霊力の淡黄色の光はどこにも見えなかった。


 なぜか急に、霊力の攻撃が止んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る