第3章 3話 夜闇の森で③

 話……。


 昨夜の悲しげな優夜の姿が浮かぶ。


 あの話の続きなら、すごく大事な話なんだ。


 早く帰りたい。

 優夜先輩のとなりに行きたいっ。


 ゆん菜はじっと月を見つめた。


 ふいに、近くの木からガサッと葉ずれの音がしたからだ。高い場所からだった。


 目を凝らしたゆん菜は、息を飲んだ。

 音がした場所になにかが見えた。


 人の衣のような物だ。暗くてはっきりしないが、紺色の生地が見える。衣は木の上でうごめいていた。人の目のようなものが見えた。


 誰かが見ていた。瞳は上下に動き、ゆん菜の姿を確かめるようにしている。

 やがて、木から飛び降りた。


 ガサガサと、誰かが森の中を走り抜ける音がした。


 葉ずれの音が止んでしばらくすると、今度は金属音がした。


 檻の格子になにかがぶつかって落ちた。

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