第1章 28話 月色の優夜④

「先輩は覚えてる? 初めて逢ったときのこと」


「うん。あれが『星が結ぶ縁』の始まりだよね」


 初めて優夜を知ったのは、高校で優夜が書いたポスターだ。


 天文部の優夜は、ペルセウス座流星群の記事を新聞にして掲示板に貼っていた。


 入学したばかりの春のことだった。


 あのとき、ゆん菜は初めて流星群を知った。たくさんの流星が降るなんて、あるのかと思った。


 それで天文部に入部して、部長だった優夜と出逢った。


 そのあとも、『星が結ぶ縁』は続いた。


 偶然、同じ月型のストラップを買っていた。


 彗星を追いかけたら偶然出会ったこともあった。川に映った二人の影を、月明かりが繋いでいた。


「あのとき俺はね、ちょっと神さまを信じたよ。相手がゆん菜だから、星は縁結びをしてくれたんだって」


「わたし……?」


「うん。だって俺はゆん菜だけは信じられたから。ゆん菜はずっと俺だけを見てくれる。他の子と違って離れないって、ゆん菜といると強く感じるんだ」


 気持ちが昂ぶりすぎて、足元がふわふわと揺れた。


「わたしも同じこと思ってた。だから、いつか迎えにきてくれるって、ずっと待っていたよ」


「だから俺は、迷わすゆん菜を召喚したよ」


 優夜は石をそっとゆん菜の手のひらに乗せる。


 優夜の手からゆん菜の手に移った石は、月の光を浴びて光の残像を残した。


 糸のような弧を描く。


 本当に優夜とゆん菜を星の糸で結んだようだった。

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