第1章 27話 月色の優夜③

「あっ、そうだ」


 ゆん菜は笑顔で優夜を振り返った。


 なあに? と期待に満ちた顔をして、優夜も微笑み返してくる。


「優夜先輩、これあげる」


 ゆん菜はポケットから、石を取り出した。


 今朝、川原で拾った石だった。透き通った淡黃色をしている。


 たぶん、川の上流から流されてきたのだ。水に削られて、丸く形が整っている。


 ムーナサリア国には、そんな天然石がたまに落ちていることがある。


「星みたいな石でしょ」


「きれいだね」


 優夜は目を細めた。まつ毛の向こうの瞳がきらきら輝く。


 実は、と、優夜もポケットを探った。差し出した手のひらには、同じ色の天然石が乗っていた。


「俺も昨日、同じものを拾ったよ。ゆん菜にプレゼントしようと思った」


 うれしくて、ゆん菜の心臓が高鳴る。昔のことが想い出された。


『星が結ぶ縁……』


 ゆん菜の言葉に、優夜の言葉が重なる。


 二人で同じことをいったからだ。


 元いた世界で、ゆん菜と優夜はよく星に導かれたように縁が結ばれることがあった。


 それを二人で、星が結ぶ縁と呼んでいた。

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