第2章 29話 召喚者への罠③

 ハルヴィンは忌々しげにゆん菜を睨みつけた。


「まあ、追及はしないよ。ムーナサリア人は誰かを召喚しても、罪にならないんだ。罰せられるのは召喚者だけ。お前はここで果てろ」


「果てろ?」


 まさか、この牢の中で?


「召喚者は追放なんじゃ?」


「昨夜、法律が変わったよ。召喚者は処刑だ」


 昨日の夜?


「王城で昨晩はいろいろありまして、召喚者への厳罰化で落ち着いたんです」


「まだ法律は施行されてないけどな、お前には早めにプレゼントしてやるよ」


「意地が悪すぎですよ、王子」


 ラヴィエの冷たい言葉が飛ぶ。

 二人は、またずっと睨み合っていた。


「ハルヴィンさまは召喚者が憎いんですよ。大好きな兄上が、召喚者のせいでおかしくなったから」


「そうだよ。オレはお前らが大嫌いだ」


 ハルヴィンの瞳は、またとても冷たくなった。


「不可能だと思いますが、できたら生き延びてください。サークレットを外せば霊力が使えますよ。無理でしょうけど」


 ラヴィエは深く頭を下げる。


 先に歩き出したハルヴィンを追って走っていった。


 あっという間に、その姿は見えなくなった。

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