第2章 24話 召喚者の詩曲②

「召喚された者は本当に美しくて。ムーナサリア国の若い男女はすぐに虜になりました」


「すぐ恋に落ちたんだよ。それくらい召喚者はきれいなんだ」


 ハルヴィンはゆん菜を横目で見る。眺め回したあと、一笑して目をそらした。


「だが、召喚者との関係は詩曲のようにいかなかった。詩曲に出てくる召喚者は理想的だったが、本物は美形なだけで、中身は悪人だったからな」


「悪人ってことはありませんよ。……全体的に、気性が荒かったんです」


「見た目は精霊みたいにきれいなのに。中身が凶暴だろ? 落差についていけなかったんだよ」


「召喚者との恋のブームはすぐに終わりました。残ったのは、召喚者に対する悪評です」


「かわいいのに凶暴って評判な。もう国中に広まったよ」


 お前を見ているとよく分かるよと、彼はつづけた。


「かわいい顔だけど、中身は逆。足技まで使って、行儀がわるい。本当に恋が一瞬で覚めるよな」


 ハルヴィンがせせらわらった。

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