第2章 20話 第二王子ハルヴィン⑤

 本当は霊力を使いたかった。


 霊力が使えれば、攻撃ができる。

 優夜がくれた腕輪の力で家に転移することもできる。


 だが、捕縛のときに、ラヴィエに霊石のサークレットをはめられて、霊力を封じられた。


 ゆん菜は茂みを這って進む。


 だが、いきなり光のロープが引かれた。きゅうと、縄がお腹に喰い込む。


「まったく、諦めがわるいやつだな」


 ゆん菜は地面を引きずられて、ハルヴィンのほうに引きもどされる。


 ぽろぽろと涙がこぼれた。


 ゆん菜は地面を蹴った。飛び上がったまま、ハルヴィン目掛けて回し蹴りをする。


 ハルヴィンは呆れ顔でかわす。


 目標を失ったゆん菜の足は、空中で弧を描く。速度が増し、そのまま地面に落ちた。


 バランスを崩して、ゆん菜はむぎゅっと、顔を木にぶつけた。

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