第2章 18話 第二王子ハルヴィン③

「守護獣がいるってことは、あんた霊力が強いんだろ。傷と服を治してくれないか?」


 ゆん菜はぼんやりとハルヴィンに視線を返した。

 彼は黙って、自分の背中を指す。


 怒ってない?


「はいっ、すぐに」


 ゆん菜はハルヴィンの背中に手を当てる。霊力を放った。


 癒やしは得意だ。ハルヴィンの傷も服も、すぐに治った。


「お前、召喚者……」


 そんなつぶやき声がした。


 ゆん菜はぼんやりと、ハルヴィンの言葉を繰り返す。


 召喚……、召喚者?


 確かに、そう聞こえた。


 顔をあげたゆん菜は絶句した。

 ハルヴィンの表情が一変したからだ。彼は険しい目でいる。


 ゆん菜は手元を見る。あわてていたため、霊力の色をムーナサリア色に変えるのを忘れていた。


 さっきつき飛ばしたとき、ハルヴィンは本気で怒ってはいなかった。


 だが今は強い憎しみを感じる。


「捕らえろ、ラヴィエ」


 え?

 

 思ったとき、風のようにすばやくラヴィエが動いた。


 彼女は霊力を放つ。霊力は光のロープにかたちを変えた。ロープはゆん菜はあっという間に巻きついた。

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