第2章 15話 ダークブラウンの髪の少年⑥

 突き飛ばされても動じず、彼はクスリとわらった。


 後ろのラヴィエを振り向く。


「ラヴィエ、見なかったことにしろよ」


「はいはい、分かってますよ」


 ラヴィエは優しくゆん菜を見た。


「あなた、もう行きなさい。なかったことにしますから」


「なにをですか?」


 ゆん菜は聞き返す。意味がよく分からなかった。


「さっきの暴力です。この場合、重罪なんですよ」

「重罪?」


 ゆん菜はぼんやりしてしまう。


 ちょっと押しただけなのに。


「なかったことにしますよ。でも、代わりに交換条件を出してもいいですか?」


 なんだか、全然話が見えない。


 ラヴィエは苦々しい顔で彼を示した。


「あなたにも、彼の愚行は忘れて欲しいんです。これ以上、彼の評判を落としたくないんですよ」


 このバカ王子のねと、ラヴィエは続けた。


 バカ王子といわれた彼は、ラヴィエを睨む。


 二人はずっと睨みあっていた。

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