第2章 8話 村人の噂話②

 ゆん菜は枝葉の奥に潜り込んで身を隠した。


 だが、声は中年くらいの男女のものだった。王子ではないようだ。


「……なに、その噂、本当なの?」

 女の人が不安げにする。


「ああ、大騒ぎだったらしいよ」


「お城で? まさか」

「まさかだよな。だから、緘口令も敷かれたって」


 お城の噂話……。


 ゆん菜はため息をついた。お城のことは、話を聞くだけでも疲れる。


「それで、誰と誰の刃傷沙汰?」


「分からない。でもミシュアーナ王子の従者や家庭教師が、何人か追放されたとか」


「家庭教師ってエレミアさま……」


「知ってるのか?」


「敬虔で有名な聖女さまじゃないか。となりのおじいさんがファンなんだよ」


 エレミア?


 ゆん菜は同じ名前を知っていた。


 優夜の友達と同じ名だ。ゆん菜も会ったことがある。

 家に遊びに来たことがあるのだ。


 優夜の姉のような存在だと紹介された。

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