第2章 6話 村はずれの森で⑥

「お妃さまよー。ユナ。お城入りよー。お姫さまになれるのよ」


「お姫さま?」


「うん。王さまの義理の娘になるんだから、お姫さまになるってことでしょ? なるよね? あれ、なんか間違ってる?」


「……分からない」


 風が吹いて、木漏れ日が揺れた。


 エスミナとの会話を思い出していたゆん菜は、木の根に足を引っ掛けて転びそうになる。


 ゆん菜の足元で、地面に差し込む光が踊った。


 来た道を振り返る。ずいぶん歩いたと思う。


 もう少ししたら森を出られるかもしれない。


 ゆん菜は細心の注意を払い、四方を見ながら、ゆっくりと道を進んでいった。


 いつの間にか、日は高く登っていた。


 あれ……。


 道の左側には、やけに木が密集していた。


 その中で、コの字に木が生えている場所があった。見上げれは、斜めに垂れ下がる枝がある。


 三方の、まるで壁のように並ぶ木々に、屋根のように枝葉が覆いかぶさる。

 小さな家のようだった。


「すごい。ここ、いいな」


 ゆん菜はわらいを堪えて、枝の下に潜り込んだ。

 狭い場所はすごく安心する。


 王子の話で萎れきっていた心が蘇ってきた。

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